不耕起栽培と再生農業の未来 ― 自然と共生する土壌の科学 ― 「土を育てる(ゲイブ・ブラウン)」 読書メモ

土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命 ゲイブ・ブラウン 服部雄一郎 読書 農業 レビュー 読書感想
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養老孟司さんが好きな一冊(ALL REVIEWSGLOBE+)。本書発刊から執筆時の2024年現在まで、度々インタビューなどで本書に言及している。


不耕起栽培の本である。舞台はアメリカ。災害により化学肥料を買うことが困難になったというところがきっかけ。

カバークロップは何種類も混ぜて撒く。7-8種類くらいの品種をブレンドする。

「鍋はかき回すべし。さもないと底が焦げ付くからね」→ 滞留していることが好ましくないの意味。

表土の流出は、A層位が流出することを指す。やせた土地を復活させるというのは、B層位からA層位を作り出すことを指す。

カバークロップの種類は89ページ。位置No.1088に存在するが本書の重要な部分のため、転載は避ける。一例をあげれば、キビ・アワ・ササゲ・ダイズ。

インターンを招き入れての苦労話。得た教訓は「何から何まで説明しないとダメ」「もしかしたらインターンたちは、私に忍耐を教えようとする神の使いなのかもしれない」。

炭素率を整えるには窒素分の多いマメ科をカバークロップに加える。

自然は「一時的なストレス」ならやり過ごせるが毎年発生する場合は、やり過ごすことができない。


用語

  • A層位(エーそうい):土壌の一番上の層、表土のこと。バクテリアや真菌、原虫、ミミズなどが棲む。概ね深さ5センチから45センチ程度。植物が滲出する液体炭素のほとんどが行き着く。
  • B層位(ビーそうい):土壌におけるA層位の次の層。下層土のこと。深さ50センチほどから。ミネラル分を含むが表土と比べると有機物の量や微生物の活動は少ない。植物の根が進出することで微生物が増え、A層位化する。
  • C層位(シーそうい):B層位よりもさらに深い層。母材とも呼ばれる。粗い岩や石などで構成。時間が経つにつれ、徐々にB層位化する。
  • アルファルファ:マメ科ウマゴヤシ属の多年草。ムラサキウマゴヤシとも。
  • カバークロップ:土壌を覆うために植えられる植物のこと。自生も含む。植物が土壌を覆うことで水分の蒸発を防ぎ、土壌細菌なども保護する。
  • 菌根菌(きんこんきん):菌根を作って植物と共生する菌類(カビ)のこと。土壌の養分を吸収し植物に与え、植物からは光合成生成物を受け取る。
  • グリホサート系除草剤:葉にかけて根まで枯らす系の除草剤。ラウンドアップなど。
  • 根圏(こんけん):植物の根と土が接する面のこと。植物の根から出る滲出物の影響で周辺に土に微生物が発生・活性化するなど相互作用が出る。
  • 資源保存理論(COR理論):植物などにストレスを与えることで、より成長を促すこと。いかなる生命体も必要な分以上には創り出さないので、適度なストレスを与えて成長を促す。なお、ストレス過多は良くない。
  • 糊状物質(のりじょうぶっしつ):「のり」のように貼り付く物質のこと。
  • バットラッチ(Batt-Latch):ゲートを自動開放できる電気ロック式の装置。
  • フーゲルカルチャー:ドイツ語で「盛り土農法」。倒木や剪定枝を活用する。
  • ホリスティック(Holistic):全体的、包括的の意味。
  • モブ放牧(群れ放牧)輪換放牧のこと。
  • リジェネラティブ(Regenerative):再生型、再生できるの意味。
  • 輪換放牧(りんかんほうぼく):牧草地をいくつかに区切り、一定期間ごとに場所を変えて放牧すること。
  • ロールベール放牧:牧草が生えない時期の放牧の際に、牧草をロール状に束ねたロールベールを並べて牛などに食べてもらう。
  • ローレンツ・ヒルトナー(Lorenz Hiltner):ドイツの土壌学者・農学者。微生物が植物に与える影響などを研究。微生物の多い土壌は植物の健康状態に著しいメリットを与えることを発見し、根圏の概念を開発。微生物生態学の先導者。

紹介される本


土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命
土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命


土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命
2022年5月31日 電子書籍版発行
著者:ゲイブ・ブラウン
訳者:服部雄一郎
発行所:NHK出版

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