「還願 DEVOTION(PC)」プレイ後の感想

 「還願 DEVOTION」のクリアから1週間ほどが経ち、心に残ったものに沿いながら感想を綴る。


<ネタバレを多く含みます。ご注意ください>


本作は台湾のデベロッパー「Red Candle Games」が開発したウォーキングシミュレータ。ステージ内を歩き回り、物語を紡ぐもの。主人公は脚本家。妻は元女優。二人の間には一人娘がいる。


1980年代が舞台。台湾プレイヤーからは「おばあちゃん家シミュレータ」と評価されているという。オブジェクトが精緻に配置され「おばあちゃん家」を思い出すのだろう。アパートというよりは団地だろうと想像する。なるほど、扉は二重になっているのか。などとプレイして思う。



主人公は仕事が順調だった頃に、トップ女優だった妻と結婚をしている。妻は結婚を機に引退。二人の間には娘が生まれ、娘は絵を描いたり、歌を唄うことが好きなようだ。そして才能もあったのだろう。テレビ番組に出演し、高評価を得ている。


娘は二人にとっての宝物であり、生きがいでもあった。家族の中心には常に彼女がいたし、将来に希望を持っていたように思う。主人公は結婚後は仕事が順調とはいえなかったが、娘を愛していたし、ささやかな幸せはそこに確実に存在したように感じた。


ある出来事をきっかけに家族は動揺した。父は祈り、母は建て直そうと苦心した。夫婦には喧嘩が増えた。娘は何もできなかった。


本作はホラーゲームに分類される。私はプレイして驚いたことは多々あったが、恐怖を感じることは少なかったように思う。1980年、1985年、1986年を行き来し、家族の思い出を追う。それぞれがそれぞれに幸せを願っていた。もがいた。でも、うまくいかなかった。


主人公である父は、できる限りのことはした。娘を想って。しかし、その行動は空回りしていた。終盤になり、娘が何を望んでいたのかに気づく。そして、テーマソングが流れ、エンディングを迎えた。


娘は自分がきっかけで両親に喧嘩が増えたことに苛まれていた。父はそれに気づかなかった。願っていたのは「あの頃のように、仲良く三人、リビングで過ごしたい」。娘はおそらくこの世にはいない。妻も家を出ていった。しかし、娘は両親を責めていない。


「パパ、おうちへ帰ろう」


あっちの世界に行ってしまったけれど、もし叶うなら、来世でも一緒に過ごそう。私はエンディングをこの様に解釈した。すると、感動を覚えた。今まで見ていた景色は、夢の中だったのかもしれない。娘が出演したテレビ番組の録画を見ていて、寝てしまった。この時点での時系列はどのようにも解釈できる。



私は主人公に託す。「嫌な夢を見た。さて、娘の顔を見て、寝よう。大丈夫。ぐっすり眠ってる。さて、私も寝ようか」と。エンディング後の世界は、まだささやかな幸せが続いていた時期で、この夢を見たことで、今後起きる苦難も家族三人で支え合って乗り越えていってほしい。あのリビングルームで楽しく過ごしてほしいと思った。

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