「DEATH STRANDING(PS4)」プレイ後の感想


「DEATH STRAINDING」公式サイトはこちら。山登り実況動画の再生リストはこちらAmazonのレビューはこちら。クリア時間は約65時間。

プレイしていないと届かない魅力

「DEATH STRANDING」は2019年の話題作のひとつだ。ゲームクリエイター小島秀夫(以下、小島監督)がコナミを退社して、はじめて手掛ける完全新作のゲームである。

小島監督の作品をふり返ってみると、筆者は遊んだことがほぼ無い。記憶の奥で「ポリスノーツ」を遊んだ記憶はあるが代表作の「メタルギアシリーズ」はちょうどゲームをしない時期だったこともあり、「スネーク / ステルス / 大塚明夫」といったイメージしか無いのだ。

「DEATH STRANDING」はリリース直後に賛否両論を呼んだことは記憶に新しく、「さすが小島秀夫」という称賛もあれば「地味すぎてつまらない」「自己満足作品」という感想は目に入った。たしかにYouTubeで実況動画を見ても面白さが明確には伝わってこない。小島作品をよく知らない私からすれば「称賛しているのは小島のファンだから」とさえ思えた。それくらいレビューや感想動画の文言は、"ゲームをプレイしていない私に届かなかった"。

美しく長い時間を過ごす

実際にプレイしてみると、カットシーンの美しさには驚かされた。ノーマン・リーダスもギレルモ・デル・トロも知らない私は、このコンピュータグラフィックスで再現されたサム(ノーマン・リーダス)やデッドマン(ギレルモ)がCGを介して再現されたとは思えなかった。もちろん、頭の中では理解しているが「プレイステーション4でここまで表現できるのか」というのは驚異であったし、なぜか嬉しくも感じられた。


本作はカットシーンがとても美しい。そして、とても長い。特に序盤と最終盤はコーラとポップコーンを横に置いた方が身のためだ。トイレについては大丈夫。スタートボタンを押せばムービーは一時停止される。先を急ぐ場合はスキップ機能も用意されている。

ゆるい繋がりにリードされる思考

美しく長い時を過ごしたあとは、ゲームプレイの核となる「配送」がはじまる。この広大なマップは高山地帯を歩いているような感覚に陥る。ゴツゴツとした岩場。冷たそうな川を渡り、都市から配送センター。配送センターからシェルターへと荷物を運んでいく。高い崖はハシゴを使い、谷にはロープを使って降りていく。

「配送」をどう捉えるか、「繋がり」をどう捉えるかは本作にとって重要だ。私は序盤の東部地区を歩いている時に、岩場を越えるだけでもドキドキしたし、目に見える山の頂に登った時にはしっかりとした達成感を味わった。ミュールやBTはとても怖かったが、「山賊」や「熊」だと思えば合点がいった。なるべく近づかないように気をつけて、道なき道を開拓し、中継ステーションや配送センターを目指した。

新しく通信を繋ぐと、その地域に人工物が出現する。「DEATH STRANDING」をプレイしている他のユーザーが設置した発電機や橋などだ。こうした人工物は時に心強く、時におせっかいだった。ソロプレイが基本のゲームではあるが、他のユーザーとゆるく繋がれる。互いに「いいね」を送り合う。人工物に助けられた経験をすれば、自分も誰かのために橋を建設しよう!ハシゴを設置しようと考えるようになる。そして、車両が使えるようになってからは国道におかれたトラックが邪魔にも思えた(端に寄せてくれ)。

この「配送」を行うマップはオープンワールドになっており、プレイヤーはどこにでも行ける。繋がっていない地域に向かう時は「ルート開拓」を行う必要がある。岩がゴツゴツした世界のどこを通っても良い。自分の通ったところが道になる。うまく新しい地域を繋げられた時は安堵と達成感に包まれている。

自分しか気づかないイースターエッグの発見

当初、私はルート選択があまり上手くなかった。しかし、プレイをしていると「ここなら登れるな」「遠回りだけど安全なルートを作ろう」と自然になっていった。こうした成長は序盤から中盤におけるモチベーションにつながった。山を読めるようになった気になったのだ。しかし、終盤に気づいてしまう。この自然と思っていたマップにはいくつかの動線が用意されていることを。自分が開拓したと思っていたルートは、このルートを通るよう誘導されていると分かった時、この一見分からない地味な仕掛けを用意した小島監督とコジマプロダクションスタッフのモチベーションに感心してしまった。

なるほど。これはプレイしてみないと気づかないし、小島作品にファンが多い理由のひとつも分かったような気がした。この小さな気づきは「小島監督のメッセージを自分だけが知った、自分だけが分かった」ような特別感が得られる。そういえば、本作にはこうした自分だけしか気づかないイースターエッグが多く散りばめられているように思う。

それはツギハギだらけのように思えたストーリーにも用意されている。専門用語や舞台内用語が飛び交う本作では「アメリカ再建のための繋がり」という大筋は理解できるが、背景や過去は探究心を持つプレイヤーにしか与えられない。各拠点のNPCと親密度を深め、届けられるメールや資料に目を通さないとこの世界は理解できない。理解しようと努力するプレイヤーには、膨大な量の文章と粒のひとつひとつのような「知」が与えられる。それらを繋げることでこの世界の研究者になれる。ゲームを通して映画や小説の世界に没入する感覚はスペシャルな経験として探求者を虜にしただろう。

プレイステーション4の能力を最大限に

話を変えるが、本作で気になった部分に触れないといけない。本作はカットシーンの美しさ、ゲーム体験、コントローラに至るまでプレイステーション4の持つ能力を最大限に使っているように思う。筆者はプロではない、ノーマルのプレイステーション4で遊んだが、処理落ちのような感じでプレイが度々中断されることがあった。ゲームプレイが一時中断し、右下に「Now Loading」が表示される。冷却ファンが爆音を上げる。これは軽微ながらマイナス要素になりえる。

また、カットシーンでは同じシーンが視点を変えて繰り返される。特に最終盤はクドいと感じるかもしれない。そして美しく長い。とても象徴的で美しさやメッセージが最高潮に達した時も余韻を与えてくれない。小島監督の話を朝までずっと聞いている気すらしてきた。体調を万全にしないと口を開けて寝てしまうかもしれない。

ノーマン・リーダスを見ても「サム」としか思えない

登場人物では、クリフォード・アンガーはとても魅力的で色気のある人物だった。ママーやハートマンは段々と好感を持つようになっていった。ヒッグスはおつかれさまと言いたい。対峙しているシーンでは「龍が如くのラスボスか」とすら思った。サムはなぜか貧乏くじを引かされているような印象が最後には残った。何やっても浮かばれないような気がするのに、耐えてよくアメリカを繋げてくれたと思う。ノーマン・リーダスを見ても「サム」としか思えない。マッツ・ミケルセンは格好がとてもよかった。登場人物が出演してる映画などの映像作品を見てみたいな。


もし評価をするなら?

9.0
良い部分
  • 「美しい」カットシーンと世界。
  • 「配送」という特別な体験。地形を踏破する達成感。
  • 「繋がる」ことで得られる思考の誘導。
  • 登場人物ならびに出演者の魅力。
  • 意味のない殺生や死がない。
  • 散りばめられた遊び心。
  • 予想を何重にも裏切る展開。
  • 小島秀夫監督の社会風刺力。
気になった部分
  • プレイステーション4がしんどそう。
  • 体調を整えないと耐えられない美しく長い時間。

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